膀胱炎
〒284-0001
千葉県四街道市大日371-1
膀胱炎
膀胱は、内側から外側に向かって、粘膜、筋層、脂肪層の3層で構成されています。粘膜はさらに粘膜上皮、粘膜下結合組織(上皮下結合組織)より構成されています(膀胱の層構造 SBI pharmaホームページより引用)。主に大腸菌などの腸内細菌が膀胱内で繁殖し粘膜に炎症を起こすのが膀胱炎です。
膀胱炎の原因は腸内細菌や常在菌による細菌感染で、圧倒的に女性に多い病気です。これは男女の身体構造の違いに深い関係があるとされます(膀胱の位置)。
一つ目は、肛門と外尿道口の位置関係です。男性は肛門と外尿道口が離れているのに対して、女性は肛門と膣、外尿道口が近くに並んでいます。本来、膣にはデーデルライン桿菌という常在菌がいて膣内を強い酸性に保ち、雑菌などが増殖するのを防いでいます。ところが、デーデルライン桿菌は、生理や妊娠中、また、閉経後は女性ホルモンの低下によって減少します。すると膣内で細菌が増殖し、その細菌が膣から隣の外尿道口に入り込むのです。
二つ目は尿道の長さです。男性は尿道が約20cmと長いですが、女性は尿道が4~5cmと短く、尿道に入り込んだ細菌が膀胱に到達しやすい構造になっています。
膀胱炎は、経過により急性・慢性、併存症(他の病気)の有無により単純性・複雑性に分類されます。日常的にみる膀胱炎の多くは急性単純性膀胱炎です。
尿路の機能や形態に異常のない膀胱炎です。
尿路の機能や形態の異常により尿がうっ滞、カテーテルや腫瘍、尿路結石など持続的な感染源、免疫力低下を生じる併存症などが原因となる膀胱炎です。多くが慢性の経過をたどります。これら原因を解決しなければ治癒することはありません。また、しばしば複数種の細菌感染を認めます。
頻尿、排尿痛(排尿中よりも、排尿の後半または終了後に痛む事が多い)、尿の混濁、血尿などの症状を認めます。腎盂腎炎に至ると腰背部の痛みや発熱を認めることもあります。
尿検査:尿中の血液や細菌の有無を調べます。
残尿測定:排尿後、超音波検査で尿の出し残し(残尿)を測定します。
複雑性膀胱炎を疑った場合は以下の検査を追加する場合があります。
超音波検査:腎臓の腫れ(水腎症)や前立腺の大きさを評価することで、尿路通過障害の有無を調べます。尿路結石の有無を調べることもできます。
腹部X線検査:尿路結石の有無を調べます。
膀胱鏡検査:外尿道口から、内視鏡を入れ、尿道や膀胱の内部を観察します。腫瘍や結石の有無を確認する検査です。
CT検査:尿路の形態的異常、尿路結石の有無などを評価することができます。造影剤を使用すると、より詳細な評価が可能となります。
治療の主体は十分な水分摂取による利尿(尿量を増やすこと)と抗菌薬の投与です。多くの膀胱炎は数日程度の抗菌薬の内服により完治しますが、近年は耐性菌と呼ばれる抗菌薬の効きにくい細菌が増えているため、再診による完治の確認をお勧めします。
治療経過が思わしくない場合は、改めて尿中の細菌種と抗菌薬との相性を調べたり、複雑性膀胱炎の検査を行います。
メタボリック症候群や体重の増加も原因となることがあります。また、過激なダイエットは免疫力を低下させます。適度な運動、食事摂取により適切な体重を維持してください。
急性膀胱炎の発症後、数日~10日程度の急性期を過ぎても排尿痛、残尿感、頻尿などの自覚症状が残っているもの、また自覚症状はないが、尿中に白血球や細菌を認めるものを一般に慢性膀胱炎と呼びます。
原因(尿路の機能や形態の異常、持続的な感染源、免疫力低下)が明確で治療可能な場合は、これらを治療します。
自覚症状はないが、尿検査で細菌を認めるもの(無症候性細菌尿)については、妊娠中の方と泌尿器科的な処置(内視鏡手術やカテーテル留置など)を予定している方のみ治療を行います。
自覚症状が残っているが、尿検査で異常を認めないものについては、時間が経つにつれ症状が軽快する場合がほとんどですので、経過観察をお勧めしますが、治療希望が強い場合、生薬や抗炎症薬を使用することがあります。
症状が長期間持続すると、慢性疼痛症候群に類似した病状を示すことがあり、専門医(心療内科、ペインクリニック)に治療をお願いすることがあります。