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前立腺がん

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前立腺がん

前立腺がんの大部分は、前立腺液を産生する腺組織に生じます。早期の前立腺がんは、多くの場合、自覚症状はありません。がんが進行すると、尿が出にくい、尿や精液に血が混じる、などの症状を認めることがあります。がんが骨盤や腰などの骨に転移すると、痛みを伴う場合もあります。

前立腺がんは早期に発見すれば治癒することが可能です。多くの場合、ゆっくり進行しますが、転移を伴うと治癒は非常に難しいものになってしまいます。したがって早期発見が非常に重要な疾患と言えます。

前立腺がんの罹患数

前立腺がんの罹患数

日本全国で1年間に約91,200人が前立腺がんと診断されています。

2017年に新たにがんと診断された人は977,393人(男性558,869人、女性418,510人)で、部位別にみると、男性で最も多かったのは、前立腺(91,215 16.3%)でした。25位は、胃(89,331 16.0%)、大腸(87,019 15.6%)、肺(82,880 14.8%)、肝(26,576 4.8%)でした(日本人男性のがん罹患数)。

前立腺がんの検査

前立腺がんの診断と検査のながれ

 

スクリーニング検査

前立腺がんの可能性がある人を見つけるための検査です。

 

前立腺特異抗原(PSA)

前立腺液には、前立腺特異抗原(PSAというタンパク質が含まれています。ほとんどのPSAは前立腺から精液中に分泌されますが、ごく一部は血液中に取り込まれます。前立腺がんがあると血液中の量が急激に増えるため、前立腺がんの早期発見に役立ちます。血液検査だけで分かるため、集団検診でも用いられています。PSAはがんだけでなく前立腺肥大症や前立腺炎など、他の病気でも上昇します。癌がみつかる可能性はPSA 2-4 ng/mlのかたで20%、PSA 4-10 ng/mlのかたで30%、PSA 10 ng/ml 以上のかたで50%と言われています。

 

直腸診

前立腺には直腸が接しています。直腸診は、肛門から指を入れて、前立腺に触れることで状態を確認する検査です。前立腺の大きさ、硬さ、表面の滑らかさ、痛みの有無などを判定します。石のように硬いしこりを触れると前立腺がんの疑いが強いと考えられます。

 

直腸診

MRI検査

磁力を用いて身体の成分の反応をコンピューター処理して画像を得る検査です。がんの有無や広がり、また、骨盤内臓器への転移を調べるための検査です。X線を使用しないため被ばくをしません。造影剤を用いる場合もあります。体内に金属やペースメーカーが入っていると撮影できないことがあるため、該当する方は、必ず申告してください。

 

確定診断

前立腺がんを確定するための検査です。

 

前立腺針生検

直腸に超音波探子(プローブ)を挿入し、前立腺を観察しながら針を刺入し組織を採取します。採取した組織を顕微鏡で観察して、前立腺がんの有無、がん“を認めた場合は、その悪性度を確認します。

針生検は直腸から針を刺入する方法(経直腸的前立腺針生検)と、会陰部(肛門と陰嚢の間の皮膚)から針を刺入する方法(経会陰的前立腺針生検)があります。がんが疑われる場所や直腸の状態などで方法を決めます。

前立腺針生検は、疼痛や出血、発熱、排尿障害などの合併症が起きるリスクがあるため、入院や麻酔が必要になる場合があります。

 

前立腺針生検

病期診断

がんの進行度(広がり)を確認するための検査です。

 

CT検査

体の周りからX線を当て、体内の情報を収集し、それをコンピューター処理して身体の断層画像を得る検査です。肺、肝臓、リンパ節などほかの臓器への転移を確認するための検査です。造影剤を用いない撮影法もありますが、一般的には造影剤を血管内に注射して撮影します。診断精度の高い検査ですが、他の検査よりも被ばく線量が高く、ごく稀ですが、造影剤の副作用が生じるリスクがあります。

 

骨シンチグラフィー

放射性物質が転移のある骨に集まる性質を利用した検査です。骨への転移を確認するための検査です。放射性物質を血管内に注射した後、シンチグラフィーで全身の骨を撮影します。骨に転移があると黒く映ります。

前立腺がんの治療

前立腺がんの主な治療法は、手術療法放射線療法、内分泌療法(ホルモン療法)の3つです。これらを単独あるいは組み合わせて行います。

治療法は、がんの病期(広がり)や悪性度、また、患者さんの全身状態、年齢などを考えて選択することになります(前立腺がんの病期分類と治療の概略)

 

前立腺がんの病期分類と治療の概略

 

無治療経過観察

“がん”が小さく、悪性度が低い場合、PSAを定期的に測定しながら経過観察する方法です。治療によって生じる有害事象を回避できるのが利点です。短期間にPSAの上昇を認める場合は、治療開始を検討します。また再生検をお勧めすることがあります。

 

手術療法

前立腺がんの手術療法として、前立腺全摘除術が行われます。前立腺全摘除術は、麻酔をした上で、前立腺と精嚢を切除したのち、膀胱と尿道をつなぎ合わせる手術です。手術方法には開腹手術のほか、ロボット支援下手術などがあります。体への負担が大きいため、高齢者や全身状態がよくない方への適応はありません。

手術時に、尿道を締める筋肉(尿道括約筋)や勃起に関係する神経を傷つけることがあるため、尿漏れや勃起障害といった合併症が起こるリスクがあります。

前立腺全摘除術は、がんが前立腺のなかにとどまっている限局がんにおいては、治癒が期待できる治療法です。

 

ダヴィンチ®を用いたロボット支援下手術

現在の外科手術では、胸や腹部に小さな穴を開け内視鏡や鉗子などの器具を差し込み、テレビモニターを見ながら執刀する「内視鏡下手術」が普及しています。

術者がより正確、確実に執刀できるようロボットに支援してもらう内視鏡下手術が「ロボット支援下手術」です。

前立腺は狭い骨盤の奥にあり、近くに血管や尿道括約筋、勃起神経、直腸があるため、手術時に多くの出血を伴ったり、尿道括約筋や勃起神経を傷つけたりする可能性があります。ダヴィンチ®は、狭い空間でも良好な視野を得て、精緻な操作を可能にするさまざまな機能があり、ダヴィンチ®を用いることで、より安全・確実に手術を行うことが可能になると考えられています。

連携施設である東邦大学医療センター佐倉病院では、ダヴィンチ®によるロボット支援下手術を行っています。

 

放射線療法

放射線療法は、前立腺に放射線を照射して、“がん“を死滅させる治療法です。手術療法と同様、がんが前立腺のなかにとどまっている限局がんが対象となります。”がん“が前立腺の周囲に浸潤している(stage C)場合は、内分泌療法と併せて行います。

手術療法に比べて身体的負担が少なく、手術を行うことができない方へも行うことができます。また、前立腺だけでなく転移した部位にたいし、痛みを取り除くことを目的に行う場合もあります。

放射線療法には、体外より治療を行う「外部照射療法」と、前立腺組織内に放射線源を挿入する「組織内照射療法」の2つの方法があります。

 

外部照射療法

現在行われている放射線療法の大部分を占める治療法です。多門照射、3次元原体照射、強度変調放射線治療(IMRT)、重粒子線治療などがあります。

外部照射療法は入院の必要がなく、外来で治療を受けることができます。IMRTは通常、11回週5回照射し、約2ヵ月程度の治療期間が必要になります。

前立腺だけでなく周辺の臓器にも放射線が照射されるため、血便、血尿、排尿障害、勃起障害などの有害事象が生じるリスクがあります。

 

組織内照射療法

組織内照射療法には、前立腺に小線源を永久的に埋め込み、低線量率の放射線でがん細胞を死滅させる方法(低線量率永久挿入組織内照射法)と、前立腺に針を刺し、その針に放射線が出る線源を通して高線量率の放射線を照射する方法(高線量率組織内照射法)があります(組織内照射療法中のレントゲン像)。通常は入院で治療を行います。

外部照射療法に比べて、周辺の臓器への照射量を抑えることができるため、有害事象の発生リスクが少ないことが利点になります。

 

組織内照射療法中のレントゲン像

 

重粒子線治療

放射線の中でヘリウムイオンより重いものを重粒子線と呼びます。重粒子線治療には、①X線に比べ、病巣に集中して照射できる②X線に比べて生物活性が強く、放射線が効きにくいがんにも効果がある、③短期間で治療できる、という特徴があります。

千葉県では千葉市稲毛区のQST病院(旧 放射線医学総合研究所病院)で重粒子線治療を行っています。有害事象は一般の外部照射療法と同様です。

 

内分泌療法(ホルモン療法)

前立腺がんの大部分は、精巣および副腎から分泌される男性ホルモンの影響を受けて増殖しています。内分泌療法(ホルモン療法)は、①男性ホルモンの分泌を抑える、前立腺内での男性ホルモンの働きを抑える、ことにより、前立腺がんの増殖を抑制する治療法です。

複数の薬(注射薬、内服薬)や手術(精巣摘除術)を組み合わせて行う場合があります(注射薬+内服薬、精巣摘除術+内服薬)(内分泌療法で用いる治療手段と作用機序)

 

内分泌療法で用いる治療手段と作用機序

 

有害事象として勃起障害、肝機能障害、ほてり(ホットフラッシュ)、女性化乳房などが挙げられます。また、長期に行うことで、生活習慣病(動脈硬化症・糖尿病・高血圧症・脂質異常症)や骨粗しょう症に罹患しやすくなったり悪化したりする可能性があります。

内分泌療法を行っていても、去勢抵抗性前立腺がんになり病気が進行してしまう場合があります。治療開始時に転移を認める場合、初回治療として内分泌療法を開始してから23年で約7割の方が去勢抵抗性前立腺がんになるといわれています。

 

去勢抵抗性前立腺がんとは

去勢抵抗性前立腺がんとは、内分泌療法により男性ホルモンが抑えられているにもかかわらず、進行してしまう前立腺がんのことです。

前立腺がんは、異なる性質をもつがん細胞で構成されています。内分泌療法が効きやすいがん細胞もあれば、効きにくいがん細胞もありますし、治療を続けているうちに、がん細胞の性質が変化して内分泌療法が効きにくくなることもあります。

このように、内分泌療法が効きにくいがん細胞が生き残り、増殖することで、去勢抵抗性前立腺がんになると考えられています(去勢抵抗性前立腺がんの発生機序)

 

去勢抵抗性前立腺がんの発生機序

 

去勢抵抗性前立腺がんの治療

去勢抵抗性前立腺がんになった場合、新規ホルモン療法剤抗がん剤による治療を検討します。また、2020年には、がん細胞の遺伝子情報をもとに選択する新規治療薬が登場しています。

 

連携施設である東邦大学医療センター佐倉病院では、去勢抵抗性前立腺がんに対し、新規治療薬を含めた様々な治療を行っています。