梅毒
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梅毒
トレポネーマ(Treponema pallidum:T.p.)による細菌感染で、STIの代表的疾患です。2015年頃から、罹患率が急増しています。一般に、皮膚や粘膜の小さな傷からT.p.が侵入することによって感染し、数時間後に血液の流れに乗って全身に細菌が広がり、さまざまな症状を引き起こす全身性の慢性の感染症です。
潜伏期間は約3週間(10~30日間)で、その後症状を認めるようになります。病期(第1期:感染後約3週、第2期:感染後3か月、第3期:感染後3年、第4期:感染後10年以上)によって症状が多彩で、消えてしまうこともあるため、“忍者”のようなSTIと言われています。
T.p.の侵入部位にあずき~示指頭(ひとさし指の先)大の硬いしこりを認めます。通常、一つで、痛みを伴うことはありません。男性では環状溝、包皮、亀頭部、女性では大小陰唇、子宮頸部にしこりを認めます。口唇・手指などの陰部以外にも生じることもありますが、頻度は2~3%以下と低いです。しこりの出現からやや遅れて両側の鼠径部リンパ節が、腫れてきます。大きさは指示頭大で、複数認めることが多いです。放置しておくと2~ 3週間で症状は消失し、約3か月後に症状が出現するまでは無症状となります。
全身の皮膚・粘膜に症状を認めるようになります。特に発疹は多彩で、丘疹(小豆大~エンドウ豆大の赤褐色の皮膚の隆起を伴う発疹)、乾癬(手掌・足底に生じた丘疹で、鱗屑を伴う)、バラ疹(体幹を中心に顔面、四肢などにみられる爪甲大までの目立たない紅斑)、扁平コンジローマ(肛門~外陰部にできる丘疹)、アンギーナ(口内にできるびらんや潰瘍)、脱毛(虫喰い状の脱毛、頭髪がまばらになる)、膿疱(膿がたまった水ぶくれ)などを認めます。3か月~3年にわたり上記の発疹などが入り混じりって出現します。その後、自然に消退して無症候梅毒となりますが、再発を繰り返しながら第3期、4期に移行していくこともあります。
感染後3年以上経った状態です。血中のT.p.は消失し、ほとんど感染力がなくなります。結節性梅毒疹(しこりができた後、表面に潰瘍を生じた皮疹)やゴム腫(ゴムのような腫瘤)を認めるようになります。ゴム腫は皮下組織や筋肉、骨を破壊します。特に鼻の骨は破壊されやすいため、昔は、“梅毒になると鼻が落ちる”と言われていました。
感染後10年以上経った状態です。梅毒による大動脈炎、大動脈瘤、脊髄障害、進行麻痺などを認めることがあります。
血液中の2つの抗体(RPR、TPHA)の有無、抗体の量(抗体価)を調べることで、診断を行います。
抗菌薬投与による治療を行います。投与期間は病期により異なります(第1期:2~4週、第2期:4~8週、第3期以降:8~12週)。治療後もしばらくの間、血中の抗体価の推移をみていく必要があります。治療後6か月が経過しても、抗体価が高値の場合は再感染か治療効果が不十分と判断し、再治療を行う場合もあります。