膀胱尿管逆流症
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膀胱尿管逆流症
原発性VURは膀胱に貯まった尿が尿管・腎盂へ逆流する現象で、尿管膀胱移行部の逆流防止機能が弱いために発生する先天性の疾患です。VURは小児の約1%に発生すると推定されていますが、無症候性も多く正確な頻度は分かっていません。
胎児診断や新生児期、乳児期では男児に多く発見され、年長児以降は女児の割合が高くなると言われています。また、VURは家系内に多く発見されることが知られており、同胞間の27.4%、親子間の35.7%にVURを認めるとされています。
VURの80-90%は尿路感染症(腎盂腎炎、膀胱炎)をきっかけに発見され、急性腎盂腎炎を起こす小児の30-50%にVURが発見されます。
VURとの関連があるとされる機能性排尿排便障害(BBD)は、機能的排尿障害と排便障害を合併する病態で、頻尿、尿意切迫感、昼間尿失禁、排尿痛、排尿遅延、便秘、便失禁などの症状を認めます。
尿検査
血液検査:総合的な腎機能を評価することができます。
超音波検査:水腎症や水尿管のほか、排尿障害の存在を示す膀胱壁の肥厚や形態異常などを見つけることができます。
排尿時膀胱尿道造影(VCUG):造影剤を膀胱内に充満させ、その後排尿している間のX線検査を行うことによって逆流の有無や程度(Grade)を評価します(VCUG画像)。
核医学検査:分腎機能や腎瘢痕(きずあと)を評価します(DMSA腎シンチグラフィー画像)。
尿流動態検査:排尿障害を疑う場合に施行します。
VCUG・DMSA腎シンチグラフィー画像
尿管膀胱移行部の逆流防止機能が未熟あるいは不全により発生したVURは原発性VUR、排尿障害により逆流防止機能が障害され発生したVURは続発性VURに分類されます。また、VCUG画像によりGradeⅠ~Ⅴに分類されます(VURの国際分類)。
VURの国際分類
VURは自然消失するとされ、乳児、低Grade、片側の場合には消失率が高いことが知られています。Grade別にみた自然消失率は概ね、Ⅰ~Ⅱで60~90%、Ⅲで40~60%、Ⅳで10~30%、Ⅴで10~15%とされています。
予防的抗菌薬投与(CAP)、排尿障害に対する治療、便秘予防、包茎治療などが挙げられます。
VURにともなう腎障害は逆流性腎症と呼ばれています。胎児診断でVURが発見された患者さんにも腎障害を認めることから、すでに胎児期にも逆流性腎症が発生すると推測されています。逆流性腎症は小児期から若年者の末期腎障害の原因の5-6%を占めるとされ、保存的治療で腎障害の進行を防げない患者さんに対し外科的治療を検討します。
現時点では、1)尿路感染症のコントロールが不良な症例、2)高Grade症例、3)腎瘢痕および腎機能障害を認める症例、4)CAPを1年間以上行っても尿路感染症を反復する症例、5)排尿機能障害を伴う高Grade症例、が手術適応となっています。
膀胱の粘膜下に尿管を通したうえで新たに吻合する手術です。尿管を膀胱の粘膜下に通すことで逆流防止機能を強化します(膀胱尿管新吻合術)。改善率は逆流の程度(Grade)に関わらず95~99%と言われています。開腹下での手術が標準的ですが、近年は腹腔鏡下での手術も可能となっています。
膀胱尿管新吻合術
GradeⅡ~Ⅳに対して行われる低侵襲治療です。膀胱鏡を用いて尿管口周囲の粘膜下に少量の膨隆剤(ヒアルロン酸ナトリウム/デキストラノマー:Deflux®)を注入して逆流防止機能を強化します(内視鏡的注入療法)。VURの消失率はⅡで79%、Ⅲで72%、Ⅳで63%と言われています。
内視鏡的注入療法